一転引退の貴ノ富士に親方安堵「どの子もわが子」

日本相撲協会は11日、付け人への2度目の暴力や差別的な発言で、自主引退を促していた十両貴ノ富士(22=千賀ノ浦)の引退を発表した。

貴ノ富士の代理人弁護士から郵送で、11日付の引退届と意見書が都内の相撲協会に届いた。協会を訪れていた師匠の千賀ノ浦親方(元小結隆三杉)が、その場で正式な書式の引退届を書き、受理された。退職金などは規定通りに支払われることも決まった。

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現役続行を強く希望していた貴ノ富士が一転、引退届を提出した。9月26日の相撲協会の理事会で、自主引退を促すことが決議されたが、翌27日に会見を開いて「受け入れられません」と主張。弁護士を立てるなど、法廷闘争も視野に入れた姿勢を見せていた。だが会見は世論を味方に付けるに至らず、この日付の引退届と弁護士2人の名で意見書が協会に郵送で届いた。

謹慎中に師匠に無断で開いた会見から2週間、意見書では「相撲を愛する者として、相撲を続けたいという気持ちに変わりはありませんが、この間の協会とのやりとりに疲れ果てましたので、引退することを決意しました」と、貴ノ富士の心境がつづられた。一方の相撲協会芝田山広報部長(元横綱大乃国)が「相手は被害者ではなく加害者。理由も、やむを得ない加害者ではない」と反論した。

昨年3月の春場所中に続き、今年8月31日に別の付け人に暴力を振るった。若い衆に「ひよこ」「ニワトリ」「地鶏」などとあだ名を付け、返事は「はいじゃない。コケと言え」と強要した。繰り返しの暴力と悪質な言動があったが、退職金などが支払われる自主引退を促された。それを受け入れた形となり、この日、取材に応じた千賀ノ浦親方は「よかったと思う」と安堵(あんど)感を見せた。

同親方が、退職した貴乃花親方(当時=元横綱)から預かった弟子としては、昨年の前頭貴ノ岩に続き、2人目の暴力での引退となった。今回の件で自身にも「6カ月間、20%の報酬減額」の懲戒処分。それでも「どの子もわが子」と愛情を持って接してきた姿勢には「変わりません。かわいいし、弟子を強くさせるのが僕の仕事」と親心を見せた。貴ノ富士とはずっと連絡が取れないが、断髪式なども「本人と話してみないと」と否定的ではない。

協会は今月中に臨時理事会を開き、再発防止策の強化を進める。コンプライアンス委員会による千賀ノ浦部屋の視察も予定。千賀ノ浦親方は「暴力は絶対にダメということ」と、今度こそと再発防止を誓った。

◆貴ノ富士の代理人弁護士の意見書要旨 スポーツ庁及び内閣府にも提出予定とされ、A4用紙8枚を相撲協会に提出。引退を決意した心境としては「今回の協会の対応を見て、協会の将来に失望しました」などと記された。続いて「協会におけるガバナンスの欠如が個人の厳罰化をもたらしている」と題した項目で、不祥事が絶えない現状を指摘しつつ「個人の厳罰化は対外的なアピールにはなるかもしれませんが、コンプライアンス・ガバナンスの向上には役立たないのではないかと懸念します」と、組織の未熟さを追求した。

他にも「相撲部屋制度における人権の抑圧」と題した項目では「生活や稽古を共にする場で閉鎖的空間となっているため独自の文化(風潮)が醸成されやすいのではないでしょうか」と疑問を投げかけている。ただ協会側は「事実関係等を精査のうえ、協会の認識と見解を近くまとめる」とし、貴ノ富士側の代理人弁護士にも回答予定だという。

 

 

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この記事は日刊スポーツから取られたものです。

 

 

 

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